緊急特集:大学等におけるオンライン教育について

概要リカレント教育におけるオンライン化の流れ

新型コロナウイルス感染症の拡大は、パラダイムシフトとも言うべき大きな変化を世界に引き起こしています。そして各国が激しい国際競争を展開しているデジタル化の動きは、この変化を加速させており、政府においては、我が国の未来に向けた経済成長を牽引し、「新たな日常」の構築の原動力となる社会全体のデジタル化を強力に推進し、Society5.0を実現することが重要であると提言されています(「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~」(「骨太の方針」2020)参照)。
 このように急速に社会が変化する中、一人ひとりが人生を再設計し、新たなステージで求められる能力・スキルを身に付けられるようリカレント教育の推進が一層重要となっています。仕事や学び、日常生活など、様々な場面で移動に制約がある状況の中で、リカレント教育についても、遠隔・オンライン学習の推進など、「新たな日常」に対応した取組が進んでいます。

大学や専修学校等においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が長期化している中、遠隔授業の実施ニーズが増えており、文部科学省が、令和元年7月1日時点で、大学等における遠隔授業の活用方法を調べたところ、8割以上の大学等で遠隔授業を実施していることが分かりました(文部科学省「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた大学等の授業の実施状況(令和2年7月1日時点)」参照)。

また社会人の在宅勤務の機会が増えている中、社会人のオンライン学習のニーズも高まっています(例えばマナパスにも掲載されているJMOOCの無料講座は、3月の利用者数が前年同月比66%増。2020年4-6月のホームページのアクセス数が前年同期比で4・3倍の状況)。

「いつでも・どこでも・誰でも」学修できる、デジタル技術を活用した遠隔授業等が積極的に活用される中、マナパスでは、オンライン・eラーニングを行っている約1,400の講座が登録されております。

ここでは、大学等における社会人向けの遠隔授業の取組をご紹介いたします。
 マナパスを通じて、ぜひオンラインによる学びの扉を開かれてはいかがでしょうか。

図1
「骨太の方針2020」で社会全体のデジタル化を強力に推進することを提言
図2
約8割の大学等で遠隔授業を実施(n=1,069)

事例 1日本女子大学「リカレント教育課程」

◆令和2年4月から急遽オンラインプログラムとして準備をすすめる
◆令和2年度前期は24科目全てをオンラインプログラムとして開講

プログラムの目的・特徴

本プログラムでは、大学卒業後に就職し、その後育児や進路変更等で離職した女性にキャリア教育を通して、高い技能・知識と働く自信・責任感を養い、再就職を支援することを目的としています。
 プログラムの特徴として、1年間の受講期間の中で英語(会話、ビジネス対応)、IT、社会保険・労働法知識、会計、内部監査知識、記録情報管理士知識、貿易実務、マーケティング・市場調査等の知識・スキルを修得することに加えて、企業連携プログラム、グループワーク、インターンシップ、合同企業説明会の開催を通じて学習した受講生を就職まで繋げる一連の取り組みを行っています。

新型コロナウイルス感染症を受けての対応

コロナ禍により、対面中心のプログラムを4月から急遽オンラインプログラムとして準備をすすめました。2020年度前期は24科目全ての科目を、本学LMS(学習管理システム)とオンデマンドコンテンツ配信、ネット配信を組み合わせたオンラインプログラムとして開講しました。受講生は当初、対面授業を前提に入学手続きをしていましたが、1名の辞退者もなく、5月11日よりオンラインの受講を開始しました。本学LMSにおいて授業資料の提供、レポートの提出、小テストを実施し、掲示板では担当教員との質疑も活発に行われました。開講科目の6割がネット配信(ZOOMやTeams)を活用した同時双方向型遠隔授業での授業となり、その機能を活用したグループディスカッションやグループワークも行われ、プレゼンテーションも活発に展開されました。
 受講生側の環境については、受講生のご家族のテレワーク勤務やお子さんのオンライン授業、分散登校、デバイスの重なりや通信障害等の発生により、それらへの対応や出欠の確認方法が課題となりましたが、課題の提出時期や授業録画の掲載期間のルールを設定し対応しました。開講から一ヶ月も経つと受講生も担当教員も落ち着き、結果的には前年度よりも一人あたりの受講科目数が増える結果となり、コロナ禍においても学びやすい環境を築くことができました。

<受講者の声>
  • ◎移動時間がないため時間を有効に使うことができた。(学習時間に充てたり、家事との両立がしやすかった。)
  • ◎子供の休校期間と重なったが、遠隔授業のおかげで子供が家で、ひとりで過ごすことがなかった。
  • ◎緊急事態宣言が発令されるという状況で始まったことであるが、結果としては新たな試みに参加する機会を得て、学び方も含め発見の多い日々を過ごした。
  • ◎授業によっては、動画を止めてやり方を確認できるので、自分のペースで課題をこなすことができた。
  • ◎グループワークも、ZoomのブレイクアウトルームやTeamsの会議機能を使ってできるので、便利だった。
  • ◎画面越しとはいえ、お互いの顔(生徒も先生も)がよく見えるため、集中できた。
  • ◎教室で一方向で黒板に向かうよりも一体感がある場合もあった。
  • ◎進捗管理や情報の取得もオンラインの方がやりやすく、自分で管理するのが当たり前となった。

事例 2北九州市立大学「enPiT‐everi社会人リカレント教育プログラム」

◆コロナ禍以前から7割の科目がオンライン開講
◆スクーリング科目もオンライン科目に変更

プログラムの目的・特徴

本プログラムでは、九州・中国地方の特色ある産業を対象として、大学、企業、地域コミュニティと協力しながらIoT活用事例や情報技術の専門知識を学修し、それを活用するための実践的演習を行い、人工知能やロボット技術などの新たな情報技術の知識と技能の習得を目的としています。
 プログラムの特徴として、製造業や介護産業等様々な分野に関する事例講義によりAI、IoT、ロボット導入事例を学び、地域課題をテーマに、多様な背景を持つ受講生や地域の方々と議論することを通じて発展的なチームの作り方についても学修します。

新型コロナウイルス感染症を受けての対応

元々、科目の7割がオンライン化されていましたが、オンライン化を行っていなかったスクーリング科目については指定するPC環境が準備できる学生を対象にオンライン開講へ変更した科目や、受講者への機材の貸出によりオンライン開講へと変更した科目等があります。また、授業の際に接続の不具合を避けるための対策として、事前に接続テストの機会を設けること、ZOOM接続で問題が生じた際の連絡手段としてChatworkによる受講者とのやり取りを定着させています。

事例 3法政大学大学院「政策創造研究科政策創造専攻修士課程」

◆令和2年4月より、春学期の授業を全てオンライン授業(Zoom)で実施
◆学習支援システム(Hoppii)を活用し、授業内容のフォロー等を実施

プログラムの目的・特徴

本プログラムでは、豊かで持続可能な地域社会を実現する革新的な政策を研究・デザインし、その実現に向けたリーダーシップを発揮する人材育成を目的としています。
 プログラムの特徴として、必修科目で政策分析や政策デザインの学問的基礎を学び、選択必修科目で自治体、NPO、企業と連携した政策形成及び問題解決実習を行うことを通じて、政策づくり、地域づくり、産業創出を担う地域イノベーションのリーダーに該当する職業(国・自治体・シンクタンク等)として活躍するために必要な能力を身に付けることができます。

新型コロナウイルス感染症を受けての対応

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、大学院での授業時や通学時のコロナウイルスへの感染リスクを回避するため、4月21日(火)より開講の際、2020年度春学期の授業を全てオンライン授業(Zoom)で実施しております。授業時間内において、教員はZoomのチャット機能やブレイクアウトルーム機能等を活用し、学生と議論できる機会を設けております。授業時間外では授業を補助するツールである学習支援システム(Hoppii)を活用し、授業内容のフォロー等を実施しております。

事例 4JMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)

プログラムの目的・特徴

JMOOCは、無料で学べる日本最大のオンライン大学講座です。いつでも、誰でも、学びたいときに、質の高い講義を、広く、深く学ぶことができます。
 講座は、JMOOCの会員大学・企業が配信しているほか、JMOOCが独自企画した講座も提供しています。開講している講座は、コンピュータ、プログラミング、AIなどの情報系、理工系、統計、ビジネス、金融、歴史、法律、心理学、科学分野など、幅広いジャンルを取り揃えています。
 各講座は、4週間程度で終わるものが多く、一つの動画が5分から10分程度にコンパクトにまとめられてます。ちょっとしたすき間時間に見ることができ、こつこつと少しずつ学習を積み重ねることができます。1週間分の動画を見た後は、小テストがあり、学びの定着もすすみます。受講中には、ディスカッションボードも設置され、受講者同士や講師とのやりとりも可能です。すべての講義を受講し、修了テストに合格すると、修了証が発行され、学びのモチベーションもはかられます。

JMOOCの講座の活用方法は、それぞれ皆さんが、「何を学びたいか」に応じて使い分けることができます。例えば、講座を最初から最後まで見るのもよし、自分の知識で不足しているところを補うために、講座の一部分だけを選んで学ぶこともできます。
 100%オンラインで講座を提供しているJMOOCは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、オンラインで学びたい方々に非常に注目を集めています。サイトへのアクセス数や受講者数も伸びていて、ご自身のキャリアアップや自己研鑽に活用されています。

JMOOCのサイトから、興味・関心を持った講座を受講登録して、オンラインの学びを始めてみませんか。