特集インタビュー

リカレント教育で目指す課題解決へのスキルアップと地方創生への取り組み INTERVIEW 三井住友海上火災保険株式会社 人事部能力開発チーム長 菅原 修/人事部能力開発チーム課長代理 栗原 友太

2023年4月より3年間でリカレント講座の受講者3000人を目指し、マナパスの活用などさまざまな施策に取り組む三井住友海上火災保険株式会社の人事戦略とは? リカレント教育の促進とその効果、そこから期待される地方創生へのアプローチについて人事部能力開発チーム長・菅原修氏と同チーム課長代理・栗原友太氏にお話を伺いました。

自主的に学ぶ機会を拡充し
地方創生のチャンスにつなぐ

貴社の目指す企業のあり方、またそれを実現するための人事戦略について教えてください。

2022年から2025年までの中期経営計画の中で、「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」として、環境や社会が抱える課題の解決に貢献し社会と共に成長していくことを目指すことを掲げています。社員一人ひとりが、気候変動や災害、少子高齢化などの社会課題や地域が抱える問題など、さまざまな課題を解決するイノベーションを支え、リーダーシップを発揮するためには、これまでの業務で培ってきた知識やスキルだけではなく、新たな価値を生み出すためのスキルをしっかり学び直すことがとても重要だと考えています。

社員が「自ら学び、自ら考える」ための、研修や施策や、デジタル、マーケティングの人財認定制度、大学と連携した研修プログラムなど、多彩な切り口から社員が学べる機会を作り、社員のスキルアップを促す環境整備を進めています。

人事部能力開発チーム長 菅原 修氏

そして、もう1つ考えていたのは「地方創生」です。これまで、全国の自治体・商工団体・市町村と防災協定を結び、本業である損害保険、リスク管理のサポートを進めてきたので、地方が抱える問題解決を通して、地方創生のお手伝いができないかと模索していました。

「学ぶ機会の提供」と「地方創生」という2つのテーマを結び、課題解決につながる知識やスキルを得られる場所、人脈を広げて地方の課題にアプローチできる場所はどこだろうと考えた時に、フィットしたのが「大学」でした。日本全国の部支店に勤務するエリア社員(転居転勤のない総合職社員)が、リアルで開催される地方大学のリカレント講座に参加することで質のよい学びが得られ、そこに集う地元の社会人との交流から、人脈の構築、課題の共有、課題解決への道筋ができるのではないかと期待しました。

東名阪以外の地域に勤務するエリア社員は、リアルで学ぶ機会が極めて少ないのが現状です。オンライン講座はありますが、実際にどこかに足を運んで通学となると、前年はコロナの影響もあったのでなかなかそうした機会がありませんでした。調べてみると、地方の学校法人はリカレントに関するさまざまな講座を開催しています。そこに紐づけてエリア社員に学ぶ機会を提供できないかと考えていたところ、たどり着いたのが大学講座の情報が集まるマナパスのサイトでした。

マナパスはどのように導入しましたか?またどのように運用していますか?

通学・オンラインともに全国の大学のリカレント講座が集結し選択肢の幅が広く、社員自らが考えて講座を選べるというところに魅力を感じてマナパスを導入しました。入社6年目以上のエリア社員を受講対象とした自己学習コンテンツの1つ「Recurrent Education For The Future(Re学)」として、入学金・受講料を本社が補助する形で運用しています。本社から特定の講座を推奨することはせず、部支店がそれぞれの戦略に沿って受講者や受講内容を決めています。

勤続6年目以上のエリア社員は約5000名。地方勤務者も多くいます。対象者のほぼ全員に受講のチャンスが行き渡るよう、目指す受講者数を3年で3000人と設定しています。学びたいテーマで講座が選べるので社員にとって自由度の高い施策となっています。4月導入開始から1年弱で参加者は700人。当初は施策の認知度が低くスロースタートにはなりましたが、11月に受講数の多い講座を紹介しながら制度の周知を試みたところ、グッと受講者が増えたことに手応えも感じています。

人事部能力開発チーム課長代理 栗原 友太氏

学びたいテーマを自分で選べる自由度が好評
周知喚起で「学ぶ意識」アップへ

受講者からどのような反響がありましたか?今後の課題などはありますか?

会社負担で自由に学べてスキルアップができる機会があるのはありがたい、次年度もこの制度を活用したい、という声が多く、受講者とRe学に関心のある社員を集めた座談会では、自分で学びたいテーマが自由に選べること、たくさんの講座があり選択肢が多いこと、使いやすいことが高評価を得ていました。多くのエリア社員がお客様と接する業務なので、全体を通してコミュニケーションスキル、話し方・文章の書き方、語学、Officeスキル、メンタルヘルス、ビジネス思考、ロジカルシンキングなど、実践で活用できる講座が人気を集めています。受講形式はオンライン80%、通学19%、通信1%。当初、目標の1つとしていた地方創生、そこにつながるリアル開催や交流の場への参加は、講座数が十分ではないことから実現できていませんが、社会人同士でつながる機会や講座の開催を大学に提案し、地方大学との共創を試みるなど、これから解決策を探っていきたいです。また部支店によって活用にバラつきがあるので、社員への周知はもちろん、使い方の説明や講座の紹介、情報提供もしながら部支店の人財育成の意識アップにも尽力していきたいと考えています。

人事部能力開発チーム長 菅原 修氏

社会人の継続的な学びを支える
実践的な大学プログラムに期待

大学のプログラムに期待すること、今後のリカレント教育計画についてお聞かせください。

3年で3000人の参加者を目指すRe学の目標達成に向けて2026年までマナパスの活用は継続し、引き続き自己学習の裾野を広げる取り組みに励みたいと思っています。大学には、実践で役立つスキルの講座や、参加しやすい開催時期の設定など、社会人の持続的な学びにつながる教育プログラムの提供を期待しています。

人財育成に携わり、私もあらためて学びの大切さを実感しています。この施策をきっかけに「自分も学んでみよう」と思うエリア社員が増えることに期待しつつ、学びに消極的な社員にも、まずはオンライン講座から気軽に第一歩を踏み出してほしいです。そしてその学びからヒントやアイデアを得て、問題解決に資する新しいビジネスやサービスを展開できればと思っています。

本日はありがとうございました。