特集:人生100年時代シニア層の学び

人生100年時代の到来

日本の高齢化率は28.7%(2020年9月時点)で、世界で最も高齢化が進んだ国となっています。人口の高齢化は世界的な流れですが、日本はこれからも世界の先頭を歩み続けていくことになります。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、平均寿命は今後も伸び続けることが予想されています。さらに、医療技術の進歩などにより、多くの人が100歳まで生きられる、100歳まで生きていかなければならない「人生100年時代」がすでに到来しているといわれています。

人生のあり方の変化と人生設計力

「人生100年時代」の到来は、私たちに大きな変化をもたらそうとしています。そのなかでも、最も大きなものは「人生のあり方の変化」といえます。一昔前の高齢者といえば、男性は60歳で定年しリタイア後は趣味の盆栽を育てながら縁側でお茶を飲み、女性は台所で家事をしながらたまに地域の集まりへ行ったり孫と遊んだり…というイメージを持つ方が多かったのではないでしょうか。しかし、平均寿命・健康寿命の延伸、情報通信技術の発達などにより、現在ではそのような画一的な高齢者像は薄れつつあり、生き方・暮らし方は非常に多様化しています。

さらに言えば、就職、結婚、子育て、退職、セカンドライフなどを含めたライフコース・スタイルそのものが多様化しており、何歳であっても自分の知らない世界に飛び込んでみたり、今までできなかったことにチャレンジしたりといったことが可能になってきています。

そのため、これからの「人生100年時代」では、自らの生き方を考え、自ら決める人生設計力が重要といえます。100年という一度しかない長い人生を自ら設計し、様々なことに何度でもチャレンジできること、そして自分らしく生きることは、現在を生きる私たちに与えられた特権であるといえるでしょう。このことは、現在のシニア世代はもちろんのこと、40代50代の現役世代、そしてさらに若い世代にとっても非常に重要なポイントです。

シニア層の学び

今の60代70代の方に目を向けてみると、高齢者やシニアと呼ぶことがためらわれるほどに、心身ともに元気で若々しく、活発な方がたくさんいらっしゃいます。さらにその上の80代90代の方においても、趣味や様々な活動に関わり充実した日々を送られている方が多くいらっしゃいます。

こういった方々にお話を聞いてみると、新しいことや楽しそうなことへのアンテナが高く、そういったことを受け入れる柔軟性と、とにかくやってみようというフットワークの軽さ・チャレンジ精神を持っていることに気づかされます。これらは、充実した人生を送るための重要な要素になるかもしれません。

「学び」という点でみても、新たなチャレンジをされている方々の表情は本当に楽しそうでいきいきとされています。また、シニア層の学びといっても、趣味のことや健康教育ばかりではありません。文学・歴史・語学に関すること、ボランティア活動に必要な知識、インターネットに関することなどに関心が高いことが確認されます(図表1)。さらに、学生時代や現役時代とは異なる分野を学び直したいということもよく聞かれるエピソードです。

グラフ1
出所:内閣府「生涯学習に関する世論調査」(平成30年)※60歳以上の回答を抜粋して作成。

学びの動機についても何を目的にするかは人それぞれですが、ライフスタイルの多様化に伴い、今の活動や仕事に活かすため、新たな就職や転職といったセカンドキャリア形成のためなど「生涯現役」を意識される方も多くなっていくと考えられます。

また、新たな学びで得られるものは、知識や教養だけではありません。ともに学ぶ仲間や人脈の広がりを得られるという点も、自分を見つめなおすきっかけになったり、新たなライフスタイルを築くことにつながったりと、充実した人生を送るためのヒントになるでしょう。

(参考)

グラフ2
出所:内閣府「生涯学習に関する世論調査」(平成30年)※60歳以上の回答を抜粋して作成。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響

新型コロナは、私たちの生活に大きな影響を与えています。特に、対面での接触が制限されることで、気の合う仲間との食事やおしゃべりといった日常的な楽しみもこれまでと同様にはできず、人とのつながりが希薄化してしまいもどかしい思いをされている方も多いのではないでしょうか。

しかし一方で、大きく進展したものもあります。それは「デジタルやオンラインの活用」です。総務省は、2020年に予定されていた東京オリンピックを目途に、テレワークを軸とする働き方改革を掲げていました。それが、新型コロナの影響により対面接触が制限されることと引き換えに、テレワークの推進だけでなく広く一般的にもデジタルやオンラインの活用が進んだことは間違いないでしょう。

この流れは、シニア層においても同様です。実際に、オンラインを活用して地域活動や趣味のサークルなどを実施している事例、オンライン飲み会など新たなコミュニケーションを始めた事例が多くあります。シニア層にとっては、デジタルスキルの習得をはじめデジタルに触れてみること自体が学びのターゲットであり、新たなチャンスになっています。学びの場においてもオンラインキャンパスの導入が始まっているところもあり、こうした波が広がることで、デジタルやオンラインの活用は世代を超えて今後ますます進むと考えられます。

園田学園女子大学 シニア専修コース
オンラインキャンパス、学生同士のつながり、学びの意識

まとめ

これからの人生100年時代においては、自らの生き方を考え、自ら決める人生設計力が重要になります。長い人生を自ら設計し、様々なことに何度でもチャレンジできることや自分らしく生きることは、現在を生きる私たちの特権であるといえます。

同時にデジタルやオンラインの活用が進み、今まで知ることのなかった、接することが難しかった世界にも、簡単に触れられるチャンスが広がっています。また、デジタルスキルの習得によって暮らしはさらに豊かになり、新たな展開も期待されます。

来年の今ごろ、「良い1年だった」と笑い合えるように、ご自身の興味のあることや新しいことなど、この特集を参考にまずは少しでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。