特集就職氷河期世代支援と学び

平成不況のあおりを受けたいわゆる「就職氷河期世代」の苦境が続いています。40歳前後という働き盛りにもかかわらず、男性社員のうち非正規は10%近くを占め、給与額は前後の世代に比べて低い傾向にあります。このまま年を重ねれば社会保障制度を圧迫しかねないリスクにもなり、「自己責任」ではなく、「世代問題」として行政に一層の対策を求める声が高まっています。この特集では学び直しの観点から「就職氷河期世代」支援策の一部をご紹介します。
1就職氷河期世代とは
就職氷河期世代に関する法令上の定義はありません。政府としては概ね1993年から2004年にかけて高校や大学等を卒業し就職活動をしていた方々が、就職氷河期世代に該当するとしています。厳密に年齢では区切ることは難しいですが、概ね30代半ばから40代の方が多いといわれています。
2就職氷河期世代の現状
雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った就職氷河期世代の方は、現在も様々な課題に直面している方々が多く、政府は、不本意に非正規雇用に甘んじている人たちが50万人、長期間働いていない人や社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする人たちなどが40万人、その他も含めて、就職氷河期世代で支援を必要とする人で、100万人規模になると想定しています。
日本の場合、新卒一括採用をはじめとする雇用関係が続いてきたこともあり、非正規雇用で入職した場合、その後もなかなか正規採用に転じられないという事情があります。その結果、非正規雇用ではスキルを磨く機会が少なく、その後の転職に生かせないという悪循環に陥っています。キャリアがつながらない、専門性を身につけることができないことから賃金の上昇も抑制され、就職氷河期世代は、賃金面でも差が生まれています。

就職氷河期世代の賃金
3就職氷河期世代支援
就職氷河期から10年、20年を経た現在も、就職氷河期世代が抱える上記の課題は解決したとは言えません。そこで、政府を挙げて支援していくという強い意思を示すため、2019年6月、経済財政政策の基本方針である「骨太の方針」の中に、大きな柱の一つとして就職氷河期世代支援を盛り込みました。これを受けて翌月には内閣官房に就職氷河期世代支援推進室を設置し、厚生労働省、文部科学省、経済産業省、総務省など各省庁とも連携して、政府一丸となって支援する体制を整えています。就職氷河期世代の高齢化が進むなかで、支援にあたっては待った無しの状態ですので、政府はこの3年間で集中的に取り組むことで、就職氷河期世代の課題解決の促進を目指しています。
4支援の二つの柱
就職氷河期世代支援プログラムの柱は大きく二つ。一つは不本意に非正規雇用で働く人や、就業意欲はあるものの、スキルや経験を重ねる機会に恵まれず思いどおりに就業できない層に対する就職支援サポートです。ハローワークに専門窓口を設置し、キャリアコンサルティングやきめ細やかな応募書類作成支援、資格取得などの訓練、就職後の定着サポートまでをきめ細かく行う伴走型支援です。資格取得から安定的な就労までの「出口一体型」のプログラムや民間ノウハウを活用した教育訓練・職場実習を職業訓練受講給付金の給付対象とし、受講を支援するといった施策が含まれます。もう一つは、いわゆるひきこもり状態にある人たちに、行政から段階的にアプローチしていく活動により、本人の意向を重視しつつ、社会との接点を見いだしていく息の長い支援です。
5就職氷河期世代と学び直し
出口一体型の学び直し支援策として、就職氷河期世代向けの「短期資格等習得コース」を創設し、IT(情報技術)、建設、運輸、農業など様々な分野の資格取得支援も行なわれています。 「短期資格等習得コース」は、業界団体が実施する1~3か月程度の無料の職業訓練により、正社員就職につながる資格や技能の習得を目指し、訓練修了後は、職場見学・職場体験により業界や仕事への理解を深め、会社説明会、面接会等による就職支援も行うプログラムです。就職氷河期世代の中には、就職時に自信を無くしている方もいますが、本来の資質が他の世代に比較して劣っているわけではありません。資格取得支援やキャリア相談によって、失ってきたスキルアップの機会を取り戻せば、採用側の懸念のひとつであるスキル不足がある程度解消できることを見込めます。
6まとめ
就職氷河期世代といわれる方々には当時の就職環境の悪化をきっかけに、長期に解決困難な苦境に陥っている方が多くいます。これに対しては、個々人の努力不足や選択ミスなどに帰責する単なる自己責任論では済まない社会的な課題として捉えられており、様々な支援策が策定されています。なかでも新たな職に就くための知識・スキル習得を目指した学び直しと就職とを一体的に支援する取り組みが、大学等でも数多く実施されていますので、この特集を参考にご自身のニーズに合った講座を受講してみてはいかがでしょうか。