特集女性のための学び直し

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結婚や出産などで1度退職してブランクが空くと、働くこと自体が不安で再就職活動に踏み出せない…そう感じている方も多いのではないでしょうか。学校を卒業して就職し、その後結婚や出産、介護等で一度離職し、それらが一段落した後に再就職をする、いわゆる女性の「M字カーブ」は以前と比べると緩やかになってはいるものの、それでも再就職に自分のキャリアや能力が活かせるか不安に思う方は多くいらっしゃるかと思います。

実は今、こうした再就職にあたり不安を抱えている女性に、大学でのスキル習得のための学びの提供に加え、個別カウンセリングが受けられたり、ライフキャリアをデザインし就職までサポートしたりするような、学び直しから就職までを一体的に支援する講座が増えています。 また、職場などでキャリアを積んできた女性の中には、目指すべきロールモデルが無いため自分のキャリアを描けない、スキルアップの機会が足りないと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。大学では、未来のリーダーを目指す女性に向けて、リーダーとして求められる知識やスキルを実践的に学べる講座も開設されています。

女性のためのリカレント講座にはどのようなものがあるのか、またそれらの講座はどのような方々が、どんな想いで受講されているのか。先日発足した「女性のためのリカレント教育推進協議会」のシンポジウムのレポートや、女性の学び直しに熱心に取り組んでいる大学の担当者や受講者の声を通してご紹介します。

「女性のためのリカレント教育推進協議会」発足!

2019年12月に、女性向けのリカレント教育課程を運営する6つの大学によって「女性のためのリカレント教育推進協議会」が発足し、日本女子大学で開催された記念シンポジウムには、大学・民間企業・社会人等150名以上が参加しました。協議会参加大学は日本女子大学、関西学院大学、明治大学、福岡女子大学、京都女子大学および京都光華女子大学の6大学で、女性のためのリカレント教育を推進し、更なる社会的な活躍を促進していくことを目的としています。

シンポジウムは2部構成で、第1部は、日本経済団体連合会、文部科学省、厚生労働省よりリカレント教育の推進に関する取り組みについての講演がありました。
続く、第2部は、「女性のためのリカレント教育推進協議会」の会長に就任した、日本女子大学生涯学習センター所長の坂本清恵教授からのメッセージから始まりました。

坂本清恵教授 写真
坂本清恵教授

女性活躍を推進する気運の高まりを受けて、1999年には男女共同参画社会基本法、2015年には女性活躍推進法など、女性の職業生活を支える法案が順次整備されてきました。さらに、人生100年時代を迎えた今日、いくつになっても学び直しが可能で、常に新しいチャレンジができる社会を実現するために、「リカレント教育」の必要性がますます増大しています。

現在、「リカレント教育」の意味は多様化しており、AIなどの最新技術を学ぶ高度に専門的なものから、従前は生涯教育と称されてきた就労を目途としない学び直しまでも、ひとしなみに「リカレント教育」と称されています。この多様化した「リカレント教育」に対しては、産官学の連携が模索されていますが、「女性のためのリカレント教育」は、女性の社会的活躍を推進し、労働力不足を改善し、持続社会を実現するために必要不可欠な要素として、その拡充進展が喫緊の重要課題となってきました。

女性の再就職や、ステップアップのために、新たな学びを提供する「リカレント教育」には、まだまだ課題も多く、そうした教育課程を運営する大学が相互に連携をとりながら、諸問題の共有とその解決に向けて検討を行う必要が叫ばれています。社会的な認知を得るための啓発活動を行い、関係諸官庁、諸方面にご理解とご支援を願う活動等を展開する母体として、ここに「女性のためのリカレント教育推進協議会」を設立することになりました。

続いて協議会参加大学の各代表者が、
現在抱えている課題や今後の展望について
語り合いました。

女性のためのリカレント教育の
取り組みについて

日本女子大学 坂本清恵 教授

リカレント教育課程の開設は12年前に遡ります。当初は、結婚出産を理由に離職した人を社会に戻すというものでしたが、最近は自分のステップアップのために、毎年育児休暇中の方が受講するようになってきています。今後は、学び直すにあたって離職しなくてもよい方法を模索していきたいです。

福岡女子大学 野依智子 教授

福岡女子大学では、「仕事復帰・再就職支援プログラム」「社会人女性学び直しプログラム」「女性トップリーダー育成研修」の3プログラムを開講しており、再就職からトップリーダーを目指す女性まで、幅広いニーズに対応しています。

明治大学 小川智由 教授

“女性のためのスマートキャリア”は厚生労働省からの求職者向け委託事業の実績があったことがきっかけで企画されました。委託事業では次第に女性受講者が増えていき、それならば、女性の再就職支援のための講座をつくってみようとなったのです。同じ価値観の人とのネットワークづくりが図れるのは大学という場で学ぶことの強みだと考えています。

リカレント教育の
課題と展望について

京都女子大学 竹安栄子 特命副学長

大学でのリカレント教育に関しては、大学側の経済的負担はとても大きい。講師の好意や、リカレント生の学習意欲の高さに支えてもらっているのが現状です。是非、協力してくださる機関があると良いと思っています。

関西学院大学 大内章子 教授

女性のためのリカレント教育をおこなっていくなかで、地域格差の問題に行き当たりました。地方の大学ではニーズはあっても、教員が確保できなかったり、受講生をうまく集められなかったりで、なかなか単独でリカレント講座を開講できないということです。そこで、本学ではこれまでの経験とノウハウを活かして、地方の大学と連携をしたオンライン講座を開講し、学びの場を拡げています。

明治大学 小川智由 教授

企業の方には時間とお金をかけて学びに来る受講生の努力を認めていただき、門戸を開いて欲しい。受講生には仕事を通じて社会に貢献したいと考えている方が多いので。

シンポジウムには行政、大学、民間企業、個人(リカレント教育課程の受講生を含む)など150名を超える方々が参加し、講演やディスカッションの内容を熱心に聞き入っていました。満員の会場は熱気に包まれ、女性のためのリカレント教育への期待と関心の高さがうかがえました。