特集:中村学園大学の取り組み

“食のリカレント教育プログラム”を起点にして、大学、企業、受講者のマッチングを叶える

写真:食MBAベーシックコースの様子

“食のリカレント教育プログラム”を起点にして、大学、企業、受講者のマッチングを叶える

食MBAベーシックコース
平成29年度経済産業省「産学連携サービス経営人材育成事業」の一環として、産学官連携コンソーシアム(現在の福岡食育健康都市づくり地域協議会)による議論を経て構築された社会人向けの高度イノベーション人材育成プログラム「食MBA」を基盤とし、その基礎科目群を学ぶ「食MBA ベーシックコース」として開設されたプログラム。
  • 連携企業や自治体、社会が求めている人材を育てるためのカリキュラム
  • ニーズ調査、外部講師協力、広報、就職まで、連携企業との絆の強さが中村学園大学の強み
  • もっと“食”を学びたい人に提供できるリカレント教育プログラムを

連携企業や自治体、社会が求めている人材を育てるためのカリキュラム

——中村学園大学のリカレント教育プログラム「食MBAベーシックコース」はどのような経緯やニーズから始められたのでしょうか?

中村学園: 本学は経済産業省の事業を活用し、平成27年から3年という時間をかけて「フード・マネジメント学科」という新しい学科を開設しました。その当時、自治体を含めて連携企業の方たちと一緒に「食産業ではどういう人材が求められているのか?」を議論したり、海外調査を行って、新しい学科のカリキュラムを考えた経験があったので、食産業の方々がどんな人材を求めているのかを把握していました。

また開設後も、企業との日頃のやりとりの中で「フード・マネジメント学科で学ぶような授業を社員に受けさせたい」というお声をいただいていましたので、そのようなニーズがあるのであれば、社会人向けにリカレント教育プログラムを行おうと思い、今回の文部科学省の事業に参画いたしました。

今回のリカレント教育プログラムでは、就職・転職支援という部分も大切です。改めて連携企業に「ターゲット層と授業の内容がマッチするか?」という授業内容に関する議論に参加していただきました。その際に「就職や転職ということを指標にするのであれば、資格取得支援につながるものがよいのではないか」というご意見をいただきました。そこで、近年の食品表示法の改正を受け、正しく活用できる力が身につけられるように、今回のプログラムを 「食品表示検定初級レベル」の学習内容に対応する授業にしました。

一部の企業の方には、今回のプログラムを受講していただいており、受講後に良かった部分、改善すべき部分をご指摘いただきましたので、来年度以降に反映して、いずれはさまざまな企業の方々にも受講していただけるようにしていきたいと思っています。

ニーズ調査、外部講師協力、広報、就職まで、連携企業との絆の強さが中村学園大学の強み

——ニーズ調査や授業内容の議論など、企業との連携が強いことが伝わってきますが、他にはどんな連携をされたのでしょうか?

中村学園: 本学は、産学連携の担当窓口を設置しています。また、長年にわたり、多くの企業や自治体の方々と密接な関係を構築してきました。先ほどお話しした授業内容の議論だけでなく、実際に外部講師としてもご協力いただいています。また、広報にあたっては、福岡県の生涯学習に関するホームページや商工会議所のサイトなどにも受講生募集の案内を掲載いただいたり、テレビのニュースや記事に取り上げていただいたりして、周知活動を行いました。

周知については『知人、友人、卒業生からの紹介でこのプログラムを知った』という方が多かったので、協力企業や卒業生からの周知にも効果があったと感じています。就職・転職支援の部分では、ご協力いただいた一部の企業から「受講生の中から良い人がいれば紹介をしてほしい」や「仕事のパートナーとして連携できる方がいれば」とのお声もいただきました。

——連携企業との関係づくりで心がけていることはありますか?

中村学園: 先生が主体で産学連携などをする場合、先生と企業はつながっていても、大学と企業はつながっていないというパターンが多くあります。本学も以前は「先生」対「企業」のつながりが非常に多かったのですが、それを「大学」対「企業」、つまり「組織」対「組織」の関係に改めました。イベントを行う際には、連携担当窓口の職員がしっかり関わることで、「組織同士のつながりを持つ」ことを大切にしています。

大学は、先生が教えたいことを教えるプロダクトアウトの授業が多くなりがちだと思いますが、本学はマーケットインの発想に近い授業を行ってきたのが特徴です。連携企業の協力も得ながら「食や栄養に関する専門知識を有し、社会に貢献できる人材」を育ててきました。実際に本学の卒業生が食産業で活躍していますので、本学と連携企業の間でWIN-WINな関係を築いてこられたのだと思います。

また、本学と企業の関係だけでなく、受講者と企業をつなげることもできたと思います。今回のプログラムでは、大豆で作った代替肉に代表される、Plant Based Food(植物由来の食品)を使った製品を扱う企業の方に外部講師となっていただき、調理実習を行いました。Plant Based Foodはニュースなどで取り上げられることも増えていますが、まだ世の中に広まっているとは言えません。食糧問題やSDGsの問題も含めて、これからの社会問題と食は密接な関係があることを受講者に知ってもらう必要があります。これらの商品を扱っている企業と受講者をつなぐことは、社会にも有益ですし、ご協力いただいた企業にとっては、自分たちの取り組みや商品を受講者に知ってもらう機会にもなりますので、良いマッチングができたと思います。

もっと“食”を学びたい人に提供できるリカレント教育プログラムを

——今回のリカレント教育プログラムを通して、課題や有意義に感じたことを教えてください。

中村学園: 今回、募集期間を長くとれなかったこともあり、コンソーシアムの皆様のネットワークや本学の卒業生のネットワークを通じて、受講者を募集しました。より広くプログラムを周知していくためには一般の方向けに「中村学園大学がリカレント教育プログラムを開いている」ことを発信し、募集期間に余裕を持って進めたいと考えています。

一方で、今回のプログラムはベーシックコースでしたが、我々が想定していたよりも上の年代、50代の方からの応募も多かったのが印象的でした。そういった年代の管理職の方やもっと専門的に学びたい方など、受講者のレベルにマッチングするような“アドバンスドコース”や“プロフェッショナルコース”といった専門性を高めたプログラムや、企業に属しながらスキルアップをしたい方に向けた社内研修のような形でのご提供もできないかと考えています。

また、コロナ禍での実施ということもあり、今回のベーシックコースは、調理実習のみを対面で行い、他はすべてオンラインで行いました。1コマだけにはなりましたが、対面での実習は実施して良かったと思います。一緒に学んでいるという仲間意識が強くなりますし、学びが終わった後も、受講生同士のつながりが残ります。今後は、対面授業に限らず、ライブ授業を設けるなど、横のつながりが持てるような仕組みを構築していきたいと考えています。

Voice

受講生

―受講したプログラムは、どのようなところに魅力を感じましたか?

食に関することを、広く深く知ることができました。 ものすごい情報量でしたが、たくさんの講師の方が関わってくださって、とても分かりやすく取り組めました。 実習も一回でしたが、とても有意義なものでした。たくさんの方に受講してもらいたい内容でしたね。


受講生

―受講を考える方に、メッセージをお願いします。

いろんな職種の方に受けてもらいたい内容だと感じました。食に興味のある方は受講すべきです。 たくさんのことが学べますよ。


受講生

―受講を考える方に、メッセージをお願いします。

レポート作成は大変ですが、調理学、栄養学、マネジメントと幅広く学べ、視野が広がります。食に興味のある方は、ぜひ受講すべきだと思います。