⼈⽣100年時代やデジタル社会の到来、雇⽤の流動化等の社会変化の中で、社会⼈個⼈が学び直し、スキルを⾝につけていくリカレント教育(社会⼈の学び直し)*の重要性が広く叫ばれるようになっています。
また、企業にとっても、⼈⼝減少が進み、新たな⼈材確保が次第に難しくなっていく中、従業員が「学び直し」を通じて新たな専⾨知識を獲得することで、成⻑分野への配置転換や⽣産性の向上等を⽬指すことが可能となります。
こうした中、⺠間の研修事業者のみならず、⼤学等(⼤学、⼤学院、短期⼤学、⾼等専⾨学校を含む)を従業員のリカレント教育の場として活⽤、連携している事例も⾒られるようになってきています。
そこで今回は、企業の⼈事等の担当者様向けに、⼤学等でどのようなリカレント教育が実施されているのか等を紹介していきます。
*本ページでは、リカレント教育の⼀部にリスキリングやアップスキリングを含むものとして整理しています。
1.企業におけるリカレント教育の状況
まず、企業におけるリカレント教育の状況ついてご紹介します。
令和3年度に経済産業省が実施した委託事業「「イノベーション創出」のためのリカレント教育に関する調査」では、6割を超える企業において、リカレント教育を実施していることが判明しています。
各企業におけるリカレント教育の実施の⽬的は様々ですが、若⼿⼈材や経営層(候補)の育成、中⾼年のリスキリング(知識やスキルのアップデート)などが多くなっています。このことから従業員の⼈材育成として、社内教育のみでは獲得できない知識を外部の研修機関等で獲得させ、社内での業務に活かしていく⽅針を多くの企業が採っていることが推察されます。
こうした企業のリカレント教育の実施先としては⺠間の教育研修事業者も思い浮かぶかと思いますが、⼤学や⾼等専⾨学校といった⾼等教育機関でも多くの社会⼈向けプログラムを提供しています。
⼤学等におけるリカレント教育と聞くと、アカデミックな印象が強く、「業務で活かせるものなのか」、「本当に効果があるものなのか」など、疑問に感じる⽅なども多いかもしれません。しかし、経済産業省の調査では、企業の⼈事担当者の8割以上が、⼤学等におけるリカレント教育実施の効果を感じているということが分かっています。
是⾮、社内での教育だけでなく、⼤学等を活⽤したリカレント教育を検討してみてはいかがでしょうか。
2.⼤学等におけるリカレント教育の実施状況
ここでは、⼤学等における社会⼈学⽣を対象とするリカレント教育講座の実施状況についてご紹介します。
⼤学等では、以前から、⼀般の⽅を対象とした公開講座等が実施され、研究成果等を広く社会に還元する取組が⾏われています。それに加え、近年では、就職や転職、職業上のスキルアップを⽬的とした社会⼈向けのリカレント教育講座も開講されています。
⽂部科学省の委託事業「令和4年度⼤学等におけるリカレント講座の持続可能な運営モデル構築に関する調査研究」で実施した⼤学等向けのアンケート調査によれば、7割以上の⼤学等が、リカレント教育プログラム(社会⼈学⽣を対象とし、職業につながる内容を含む⼀定程度の体系的・実践的な教育プログラム)を実施していることが分かっています。
現在、⼤学等で実施されているリカレント教育の分野については、教育や医⻭薬学等の専⾨職向けの講座に加え、経済学・経営学(MBA・中⼩企業活性化を含む)や情報・数理・データサイエンス、IT関連(AI、IoTを含む)といった企業担当者が特に従業員に学ばせたいと考える分野の講座が多く開設されています。
また、地⽅創⽣・まちづくりや電気・電⼦、機械などの分野の講座も開設されているように、企業等からの引き合いが強い分野を中⼼に、多様な業種からの、専⾨的かつ先端的な教育に対するニーズに応える内容の教育が提供されています。
なお、各⼤学で設置している学部や学科は異なるため、場合によってはお近くの⼤学等で各企業のニーズに合致するリカレント教育プログラムが開講されていないこともあります。
しかし、近年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡⼤を契機に、リアルタイム配信講座やオンデマンド講座の形式で開講している⼤学等も増加しています。
具体的にどのような講座が開講されているかについては、各⼤学のホームページだけでなく、マナパスにも掲載されています。現在多くの社会⼈学⽣等が興味を持っている講座情報等について、是⾮以下のページなどをご参照下さい。
3.⼤学等のリカレント教育講座の受講者の反応
ここでは、実際に⼤学等でのリカレント教育プログラムを受講した社会⼈はどのような教育効果や印象を持ったかについてご紹介します。
⽂部科学省では、令和3年度「DX等成⻑分野を中⼼とした就職・転職⽀援のためのリカレント教育推進事業」を実施しており、当事業に採択された48機関57プログラムの受講者を対象としてアンケート調査を⾏いました。
まず、⼤学等でのリカレント教育プログラムに対する受講満⾜度についてまとめたものが図表3-1になります。「⼤変満⾜」または「ある程度満⾜」と回答した受講者が9割以上となっており、全体として⾮常に⾼い満⾜度を⽰しています。
こうしたプログラムに対する⾼い満⾜度の要因としては、⼤学等でのリカレント教育プログラムが、各受講者の持つ⽬的意識の達成に⼤きく寄与できていることが考えられます。
受講前に期待していた内容と達成度に関するアンケートにおいて(図表3-2)、特に「幅広い知⾒・視野を得ること」について、ほぼ全ての受講者が⾼い達成度を感じているとともに、「専⾨的・先端的・⾼度な知識やスキルを得ること」についても8割以上の受講⽣が⾼い達成度を感じています。
⼤学等で提供されるリカレント教育プログラムは、教育・研究機関ならではの知⾒や蓄積を活かし、体系的・実践的なプログラムが多く提供されており、こうした内容が⾼い達成度に
繋がっているものと考えられます。
また、「社外の⼈的ネットワークを得ること」ができたと回答する受講者が半数以上いるように、社内研修等のみでは獲得が難しい新たな関係性の獲得にも繋がることが特徴と⾔えます。
また、⼤学等で実施されているリカレント教育プログラムの受講者には、学び直しに対する意識を⾼く持っている社会⼈も多く、図表3-3のように、プログラム受講後も継続的に学びを続ける意向を持つ⼈が⼤多数を占めています。
冒頭でも触れましたが、⼈⽣100年時代やデジタル社会の到来などの社会の変化の中で、社会⼈個⼈が学び直し、必要な能⼒やスキルを新たに⾝に着けていくリカレント教育の重要性が注⽬されていますが、⼀度きりの学び直しではなく、キャリア形成の中に学びを繰り返し織り交ぜていく⾃律的な社会⼈像が求められています。
企業にとっても、⾃律的に学び、⾃らを⾼めていくマインドセットを持つ従業員を多く育てることは、今後の成⻑や⽣産性の向上にとって重要な要素となってきます。
⼀⽅で、多くの従業員にとっては⾃発的な学びの意識醸成のきっかけとなる場⾯が少なく、業務として社内の研修を受講するだけでは内発的動機も限られるケースが多くなります。
こうした中、学び直しに対する⾼い意識を有する⼈々が多く受講する⼤学等のリカレント教育に従業員を派遣して受講させることは、従業員のマインドチェンジのきっかけの⼀つになる可能性があります。また、単なる知識やスキルの獲得にとどまらず、研究課題を通じた問題解決⼒や分析的思考⼒といった、あらゆるビジネスにおいて汎⽤的かつ重要な能⼒の養成が期待できます。
こうした、より広い観点での⼈材育成の場としても、⼤学等が提供するコンテンツの活⽤を検討することは、企業にとって⼤きなメリットがあると⾔えます。
4.企業向け講座検索機能のご紹介
最後に、各企業の⽬的に合致するリカレント教育プログラムを効率的に探すことを⽀援する仕組みについて、本マナパスの機能をご紹介します。
本サイト「マナパス」は、学びを求める社会⼈の⽅々へ、⼤学等で実施されている社会⼈向け講座をご紹介するポータルサイトです。
「マナパス」のトップページからは、掲載されている社会⼈向けの講座が検索可能であるとともに、講座アクセスランキングからも注⽬が集まっている講座情報を確認することができます。
また、昨今のリカレント教育への機運の⾼まりを受け、⼀般の⽅だけでなく、企業においても⼤学等が提供する講座を広くご活⽤いただくため、令和4年12⽉に「企業向け講座検索ページ」を⽴ち上げました。マナパス掲載講座のうち、企業における⼈材育成や研修での活⽤が想定される講座の検索等が可能となっておりますので、是⾮ご活⽤ください。
企業向け講座検索ページ(マナパス内)