特集:千葉大学の取り組み

地域医療に貢献する新たな福祉人材を育てたい

地域医療に貢献する新たな福祉人材を育てたい

地域密着 介護・医療DX人材育成プログラム
コロナ禍で多くの離職者が出ている観光業界、飲食業界から、人手不足である医療・介護業界へ関連資格の有無にかかわらず就職・転職し、医療介護を充実させるための教育訓練プログラム。
  • 千葉大学の専門職リカレント教育をベースに新たなプログラムを開発
  • 「初任者研修+α」の学びとして大きな存在価値を発揮
  • 「千葉大学の講座」というブランド力に手応え

千葉大学の専門職リカレント教育をベースに新たなプログラムを開発

——今回のリカレントプログラムを始められた経緯を教えていただけますか?

真原: 本学は医学部附属病院患者支援部という部門で、かねてより地域連携強化の取り組みを行い、人材教育プログラムを開発してきました。今回はコロナ禍で観光業界、飲食業界などから多くの離職者が生まれ、そうした業界から人手不足となる医療・介護業界に人材を集めることにより地域医療に貢献したいと考えたのがきっかけです。

——千葉大学では、これまでにもリカレント教育は盛んに行われてきたそうですね。

阿久津: はい。2014年に開講した総合診療医を養成する医師のキャリアアッププログラムから始まり、2017年には在宅医療の「地域療養設計管理者養成プログラム」と「遠隔医療マネジメントプログラム」の履修証明プログラムを、2020年からはその二つのプログラムをベースにICT化などを推進する「メディカルイノベーション戦略プログラム 〜遠隔医療と医療革新〜」がスタートし、これまで複数のリカレント教育を実践してきた実績があります。

——今回のリカレントプログラムとはどのような違いがあるのですか?

阿久津: これまでは医師・看護師・介護士など医療・福祉の専門職に向けたキャリアアップ・スキルアップを目的とした教育でした。今回はそのリソースを活かしながら、専門資格の有無を問わない未経験者の「就職・転職支援」という、業界以外の人を対象にした基礎科目を加え、新規プログラムを開発したことが大きな違いになります。

「初任者研修+α」の学びとして大きな存在価値を発揮

——プログラム開講にあたっては、どのような取り組みをされましたか?

真原: これまでに実施したリカレントプログラムの内容を活用したことで、過去の講座を担当された先生に引き続き講師としてご協力いただくことができました。

また、千葉大学病院の患者支援部は地域ネットワークが密であり、在宅診療、訪問看護など実務家の方、介護分野は専門教育を行っている植草学園大学、医療メディエーション研修では早稲田大学・日本医療メディエーター協会、ICTに関わる企業等にもご協力をいただき新たなプログラムを取り入れました。

——事前のニーズ調査も実施されたそうですが、その結果はどのように反映されたのでしょうか?

真原: 事前調査で「福祉・障がい者関係」のニーズがあることがわかり、障がい者福祉の講義を入れました。また、介護事業者などは資格を前提とした採用がほとんどで、初任者研修の必要性を感じましたが、初回は残念ながら時間的に盛り込むことが困難でした。次回以降はぜひ入れたい内容ですね。

——受講生の反応はいかがでしたか?

真原: 本プログラムは、受講生にとっても良い刺激になったのではないかと思います。修了後、医療事務の資格を取ることを決めた方もいましたし、受講中に「初任者研修を受けたい」、「社会福祉士資格を取得したい」という受講生の声を何度か聞くこともあり、受講後の行動変容につながった方は多いと感じました。

また、今回のプログラムでは、「初任者研修のプラスαの学びになる」という理由で、既に初任者研修を受講された方が5名ほど参加されました。彼らは理解が早い分、グループワークでチームをフォローする役割を担ってくれて、私たちも非常に助かりました。介護業界では初任者研修が受講済みであることが前提となることが多いのですが、介護だけではなく福祉人材と幅広く捉えた方が、受講生側のニーズも広がるのではないかと感じています。

「千葉大学の講座」というブランド力に手応え

——就職・転職支援を目的とするリカレントプログラムは、はじめて実施されたわけですが、学外との連携はどのように進められましたでしょうか?

阿久津: これまでの大学リカレント教育はキャリアアップが目的だったため、就職・転職支援のために労働局やハローワーク等と連携するのは初めてでした。就職イベントにブースを出し、直接呼び込みを行ったり、地域のコネクションをつくったりしながら手探りで社会福祉法人や障がい者施設とも連携し、直に受講生を獲得することができました。

また、千葉市にはこちらから直接アプローチしたわけではないのですが、先方から事業に協力したい旨、お声がけいただきました。学外から〝千葉大学の講座〟としての期待値が高く、歓迎ムードだったのは嬉しかったですね。

——リカレントプログラムを実施してみて、課題としてはどのようなことを感じましたか?

阿久津: 大学はプログラムを作ることには長けていますが、就職・転職支援については学内に専門家がおらず、手薄になっていると感じました。また、大学と実務家、公共サービス機関となると、打ち合わせ時間の調整が難しく、委員会を組織しても全員が揃わないこともありました。

そのため、プログラム作りと就職・転職支援は別組織にした方が上手く機能するのかもしれません。初年度は委員の先生方にご意見を伺うことがメインでしたが、今後はゼロベースから共に具体的な検討をしていただける委員を増やすなど、組織を再組成することにより、より良いプログラムにしていきたいと考えています。

Voice

受講生

―プログラムを受講して、どのようなところがよかったですか?

学生時代に国立大学で学びたいと思っていましたが、試験で落ちて以来、自信を失くしていました。今回プログラムを受講する事によって、自信がつき再スタートを考える様になりました。また、医療介護に対する見方がだいぶ変わり、人として成長できたと思います。


受講生

―受講を考える方に、メッセージをお願いします。

分野外や興味のないことでも、何かを学ぶと言う点で新たなチャレンジのきっかけになるかもしれません。目的が見えなくても、学べるチャンスがあればどんなことも貪欲に吸収してみて、あとから何をやりたいかを振り返る方法もあると思いますよ。


受講生

―受講を考える方に、メッセージをお願いします。

プログラムを受講することで、人生の再チャレンジへの転機が訪れると思います。まずは、勇気をもって受講してみてください。きっと、人生が楽しく豊かに、そして就職に対しても前向きに良い結果が得られると思います。