ヒアリングを通じて、地域の実情を踏まえた教育の提供へ
ヒアリングを通じて、地域の実情を踏まえた教育の提供へ
若年者の非正規就業の現状や、依然として女性の労働力率がM 字カーブを描く中で、結婚、出産、育児、介護等のライフイベントで労働市場を離れなければならない女性が数多く存在し、非正規雇用率も男性と比較し大変高いという課題を解決する一助となるために開設されたプログラム。
自分アップデート!社会福祉プログラム
全国的な介護人材不足、介護福祉士になれない無資格の非常勤職員も多数いる介護業界において、業界の今を知ってもらうと同時に、現場視察や体験等可能な限りの実地研修を取り入れることで、就職支援をサポートするためのプログラム。
- 大学の資産やネットワークを活用できるプログラム
- 「入り口」と「出口」の両方を考慮したプログラム内容に
- 就職や転職の支援に必要な、コミュニケーション能力の養成
大学の資産やネットワークを活用できるプログラム
——八戸学院大学のリカレントプログラムは、どのような経緯で実施されたのでしょうか?
堤: 地域に学び直しのニーズがあるのなら、本学の資産を活用して役に立ちたいという思いがあり、文部科学省の公募に手を挙げさせていただきました。これまでも地域貢献には力をいれていて、目に見える形での地域との連携を常に模索しています。
「若者・女性活躍推進!リスタート支援プログラム」と「自分アップデート!社会福祉プログラム」という今回のプログラムは、青森労働局や青森県、八戸市、八戸商工会議所、企業関係者などから構成している「リカレント教育推進検討委員会」のメンバーや、本学が従来から実施している各種公開講座の関係者へのヒアリング、これまで青森県内で実施された学び直し講座の受講者アンケートの結果などから、地域のニーズを把握して設定したものです。また、プログラムの内容は、リカレント教育推進検討委員会の検討をもとに設定しています。
——「社会福祉」を取り上げることになった理由や背景を教えてください。
堤: 社会福祉の分野は、全国的に非正規雇用割合が多い傾向にあり、雇用および労働環境があまり良くないと思われている方も多いので、現代の福祉、現場の現状をきちんと伝える場になればというのと、本学の短期大学部に介護福祉科があり、卒業生や留学生が地域で活躍しておりますので、そのことともつなげたいという考えから、プログラムとして取り上げることにしました。また、ニーズの聞き取り調査から、座学よりもワークショップや体験など、より実践的な講義が求められていることがわかったので、それに応えられるよう工夫を加えています。
——受講希望者への聞き取りも行った結果、プログラムの内容を見直されたこともあったそうですね。そこから見えたものは何ですか?
堤: 受講者は「若者・女性活躍推進!リスタート支援プログラム」が10名で、「自分アップデート!社会福祉プログラム」が2名。30代から60代の幅広い世代が受講し、それぞれ8名と2名に修了書を授与しました。当初は平日の夜と土日の講義を行う予定でしたが、ほとんどの受講者が就業しているということもあり、土曜日の9:00~12:10で90分の講義を2コマ行う形に変更しました。
今回は受講者の就労状況に基づいて講義の日時を変更しましたが、聞き取りをもっと早くできていれば講義スケジュールの組み立ても早くなり、受講者がもっと増えた可能性があります。また、青森県の中でも、地域によってリカレント教育に対するニーズが異なることも考えられるので、事前調査を早期に行う重要性を改めて認識しました。
「入り口」と「出口」の両方を考慮したプログラム内容に
——就職や転職の支援に向けた取り組みは、どのようなものでしたか?
堤: 就職や転職につなげることが大前提の講座なので、何を教えるかという「入り口」だけでなく、就職・転職という「出口」の支援についても、一般の学生への対応と同様に考えました。また、検討委員会に対しても、委員会の発足時から「出口」についても協力を要請し、雇用情報などの提供や、就職についての働きかけなどをお願いしました。
今回の受講者には求職者がいなかったこともあって、キャリアアップが受講の主な目的になっていましたが、中には、新しい事業を始めるために参加した受講生もいました。「若者・女性活躍推進!リスタート支援プログラム」を受講した60代の受講生は、DV等の被害者のためのシェルター運営等を目指していて、そのための準備段階として受講していました。大学では、引き続きフォローアップ講座の開催等、修了生の支援をしていきたいと考えています。
——今回のプログラムに対しては、どのような評価が寄せられていますか?
堤: 受講者には、講義後にできるだけ感想や意見を聞くようにしているほか、修了書授与の際にはアンケート調査を実施し、プログラムの満足度を確認しました。受講者の一人からは、「今回のプログラムで、大学の雰囲気を味わいながら学び直しができ、修了書をもらえたことに満足しています」という言葉をいただきました。このような声を励みに、補助金の有無にかかわらず、次年度もリカレント教育に取り組みたいと考えています。
また、プログラム終了の報告をした関係各所から、幅広い層をターゲットとしていることや、地域性を考慮した地元密着型のプログラムとなっていること、知識を提供するだけではなく、就職や転職などの「出口」まで見据えた構成になっていることが、これまでと違うという評価を得ています。
就職や転職の支援に必要な、コミュニケーション能力の養成
——コロナ禍の影響などもあって課題も見つかったと思いますが、いかがでしょうか?
堤: プログラムは当初、八戸市の中心部の公共施設内にある本学のサテライトキャンパスで行う予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況により、急遽、郊外にある本学のキャンパスに変更になってしまいました。場所がわかりにくい、アクセスが不便といった意見も寄せられ、社会人が学びやすい場所と時間の確保が重要であることを、改めて実感しました。
また、受講者からは、「両方のコースを受講したい」「もっと幅広く学びたい」といった声も寄せられていて、プログラムの設定にあたっては、こうした受講側のニーズや意見を早期に聞く必要も感じました。
——プログラムの内容などに関して、課題はありましたか?
堤: 「自分アップデート!社会福祉プログラム」では、福祉に関する基礎知識やスキルの提供はもちろん重要ですが、同時に、就職や転職を考えると、コミュニケーション能力の習得も大切だと思います。「若者・女性活躍推進!リスタート支援プログラム」も同様です。今回のプログラムでは、キャリアデザインや心理学の講義も用意しましたが、コミュニケーション能力のさらなる養成が必要だと感じました。
Voice
受講生
—受講したプログラムは、どのようなところに魅力を感じましたか?
授業もすごく楽しかったですが、受講生や講師などさまざまな方々と意見交換できたこと、新しい関係を築けたことは大きな収穫でした。
—受講を考える方に、メッセージをお願いします?
プログラムや学びの楽しみだけでなく、新しい仲間と意見を交換しあうこと、行動したことで新しい道が開けていくチャンスだと思います。
受講生
—受講を考える方に、メッセージをお願いします。
キャリアデザインについて学んだことで、自分が今後生きていく上でどんな働き方をしたいのか、どんな人間でありたいのか、じっくり考える良い機会となりました。社会人になると、日々の生活の中で自分自身についてじっくり考えることや、机に向かって勉強する機会は少なくなると思いますが、学び続ける気持ちを持つことは大事だと思いますので、気軽に参加してみるのも良いかもしれませんよ。