在学生・修了生インタビュー

事業構想大学院大学 事業構想プロジェクト研究 予防医療・ヘルスケア事業構想プロジェクト研究

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新規事業のアイディアを「学び直し」で磨く

ロート製薬株式会社 事業戦略室 室長
平澤 伸浩さん(50代)

2016年ロート製薬株式会社入社、事業戦略室 室長。
2018年4月からの1年間、事業構想大学院大学の事業構想プロジェクト研究 「予防医療・ヘルスケア事業構想プロジェクト研究」にて学び、2019年10月にヘアサロン専売のパーソナライズヘアケアブランド「CONSTELLA(コンステラ)」を立ちあげる。「旅」をモチーフに物語性を軸としたブランド展開で、40代以上の成熟した女性をメインターゲットに美と健康をめぐる「旅」を提案し続ける。

2020年3月17日

新規事業立ち上げ。市場の本質に迫るための「学び直し」

2019年10月に始まった、サロン向けパーソナライズヘアケアブランド「CONSTELLA(コンステラ)」。『星の王子様』や『銀河鉄道の夜』など、星をめぐる物語をモチーフとしたブランドサイトには、こんなコンセプトがある。
―CONSTELLAのテーマは旅です。多くの旅人が星を道しるべにして旅してきたように、ユーザーひとりひとりが、スタイリストと一緒に旅をすることを想像し、誕生しました。― 

サロンの美容師とユーザーとが、Web上の問診を一緒に行いながら最適なヘアケアの処方を組んでいく過程を「旅」に見立てている。「CONSTELLA」は星座、道標というわけだ。

平澤 伸浩さんは、ロート製薬の事業戦略室長としてこの「CONSTELLA」を立ち上げた。提供するのはシャンプーやトリートメント等のヘアケア製品だが、ブランドサイトのトップページに商品画像は一切、登場しない。一風変わった切り口での新ブランド立ち上げの背景には、どんなストーリーがあったのだろうか。平澤さんは、立ち上げ当時のミッションを語ってくれた。

「通常の新規事業開発は、自社のリソースや強みの分析、市場分析から入り、ターゲット設定や自社のポジションニングをし、事業計画を作って―というやり方ですよね。でも、ロート製薬の事業戦略室ではもっと根源的なアプローチが求められていました。現業の一歩先のマイルストーンを打つという以上にもっと、本質的に考えてほしいと。」

自社の現在の強み・弱みではなく、これからの未来に顧客はどういう風に動くのか、また時代はどういう風に変わっていくのか。5年後・10年後のニーズを予測し、新しい事業領域を開拓しながら現業との橋渡しをしていく―そんなミッションを与えられた平澤さんが、経営トップから勧められたのが事業構想大学院大学での「学び直し」だったという。

「当時、僕が新規事業領域として考えていたのが、ヘルス&ビューティという分野でした。ちょうど社内で、事業構想大学院大学での学びの機会を公募していた時期で、会長から同大のヘルスケア研究会で学んでみてはどうか、と声をかけられたのがきっかけです。新規事業のアイディアを磨き、実現させるために役立つのではないかと思い、参加を決めました。」

ユーザーの「綺麗になりたい」の先に、ヘルスケアを

事業構想大学院大学の「予防医療・ヘルスケア事業構想プロジェクト研究」は、参加する研究員おのおのが1年間で医療・健康領域の新事業を構想し、計画を策定することを目指す。ヘルスケア関連企業の新事業責任者・担当者、薬剤師、介護士、医師、また起業を目指すドクトレプレナーと呼ばれる医師なども参加する。

MBA(経営学修士)等でテクニカルな経営手法の知識を付けるのとは異なり、事業構想大学院大学では、参加者が自身の資源を活かしたアイディアを新事業として形にし、磨き上げていくことを重視したプログラムを提供している。平澤さんの「時代が求める本質的な事業の開拓」というニーズと、まさしく方向性が合致していた。

「研究会では良いインプットがたくさん得られましたが、とりわけ僕がテーマとしていた”ビューティ”が、その先の”ヘルスケア”に繋がる動機となる、という気づきは大きかったです。我々がサービスを提供し続ける結果にはユーザーの”健康”があるけれども、まずは美しくなりましょう、美しくなって欲しい、という切り口から価値を提供する。「人を健康にしようと思ったら、”健康になりましょう”と言うな」とおっしゃった先生の言葉が心に残っていて、その後、このフレーズは自社でも使っています。」

「ヘアサロンは、全国に14万から16万あると言われています。コンビニが5万5千ですのでその3倍もの規模で場がある…すさまじい吸引力ですよね。ユーザーの”綺麗になりたい”という思いに対して、僕たちはちょっとこだわったメッセージを価値にして、商品を提供する。それがうまくいけば、お客様もスタイリストさんも気づいていない価値がその先にあるはず。僕が事業構想大学院大学で考え、先生から促されたのもその部分でした。」

CONSTELLA ホームページ
CONSTELLA ホームページ(https://www.theconstella.com/

学びの場が、プロジェクトの滑走路になった

当時平澤さんが参加した研究会の参加者は9名。メディカルドクター、医療機器関係、食品関係、農業関係と、平澤さんとはフィールドの違う研究員が「学び直し」のために集った。化粧品や”ビューティ”を核としたアイディアを持つ平澤さんだが「自分のプレゼンに対し違う視点からのアドバイスや指摘を受けることができたのは大きかった」と語ってくれた。

「僕の場合は事前に決めていたテーマを持って参加しましたが、毎回楽しかったですね。自分のプランが前回に比べて今回、今回より次回という風に少しずつブラッシュアップされるのが実感できたのが良かったです。様々な視点に晒されて、プロジェクトが自分の中でテイクオフしつつある感覚がありました。」

「時には、将来こんなことをしたい、という僕のプレゼンに参加者のメディカルドクターから「そのアイディア、自分のクリニックで採用したいから持ってきてよ」なんて言われて、盛り上がるということもあって(笑)」

当時のメンバーとは、今でも付き合いが続いている。アイディアを実現可能なものとして形にし、そして社会に実装していく―そんなきっかけとして、学びの場が活かされている。

好きなことを磨くために、学び続ける

事業構想大学院大学を卒業した平澤さんが、ブラッシュアップしたアイディアをもとに、その後半年かけて立ち上げたのが「CONSTELLA」だ。最後に「本当にこれがやってみたいと思えるものを追って」と、同じ立場の社会人にエールを送ってくれた。

「もしこれから新規事業の立ち上げに携わる方がいたら、会社のリソースを利用するとか、シナジー効果があるとかを気にせずに、素直に自分が本当にやってみたいことを追って、と言いたいです。僕もブランドに対する否定的な意見を聞いて落ち込むときもあるけど、それに耐えることができるのは、本当にやりたいことだからですよね。」

「学ぶことの大切さは本当に感じます。今、「CONSTELLA」を立ち上げて、僕にとっての学びはリベラルアーツですね。「CONSTELLA」のブランドストリーには、宮沢賢治や中原中也、高村光太郎の詩を引用しています。事業のコンセプトの中には、アナログな価値を、AIでのマッチングなど最新の技術で提供するということもあり、もっと詩や絵画なども勉強したいと思います。学びはNever too late ですね。」

自信をもって届ける「CONSTELLA」というブランドをさらに輝く星とし、ビューティの先のヘルスケアという新たな地平へ、平澤さんの学びの旅も続いていく。