特集:四国大学の取り組み

就職・転職に関する課題解消につながるプログラム設定が重要

写真:プログラムの様子

就職・転職に関する課題解消につながるプログラム設定が重要

四国大学ICTリテラシー教育プログラム
徳島県内で事務職、営業職等での正規採用を目指している失業者、非正規雇用労働者、および事務職、営業職等への転職を希望している者を対象とし、ICT リテラシーやICT スキルの向上と、それらの知識や技術を活用した就職・転職の支援を目的とするプログラム。
  • 地域のICTリテラシーの実情を踏まえ、2つのコースを用意
  • 就職・転職につなげることを重視したプログラム構成に
  • チラシからSNSまで多様な手段で講座を広報・周知

地域のICTリテラシーの実情を踏まえ、2つのコースを用意

——四国大学のリカレントプログラム「ICTリテラシー教育プログラム」は、どのような経緯で実施されたのでしょうか?

高橋: 本学は、従来から独自のリカレントプログラムを実施していましたが、就職や転職の支援を目的とし、期間も半年に及ぶ大規模な取り組みは経験がありませんでした。大規模なプログラムは意義のあるものですが、大学単体で実施する場合の費用負担、また、受講生の費用負担が大きく、実施は困難と考えていたところに、文部科学省から事業募集の知らせがあり、言葉としてはよくないかもしれませんが、「渡りに船」と応募した次第です。

募集にあたっては、副学長をトップにした検討チームを編成しました。生涯学習センター長や、事務方として社会連携推進課、教育支援課、就職キャリア支援課の3課などが加わり、プログラム全体の構成や、e-ラーニングの開発、インターンシップ、実施体制などの詳細を検討しました。

——ICTリテラシーの習得について、具体的な内容や目標、成果を教えてください。

高橋: パソコンのスキルはレベルの差が大きいので、今回のプログラムでは、中上級者を対象にした「MOS資格取得支援コース(Word・Excel)」と、初心者に向けた「ICTリテラシーコース」の2つのコースを用意しました。「MOS資格取得支援コース」は、資格取得を目標にし、15名が受講。修了者は10名となっています。そのうち5名がすでにMOS資格を取得し、さらにもう1名が資格試験を受験する予定になっています。

「ICTリテラシーコース」は、一般事務で求められるWordやExcelの能力の習得を目標にし、18名の受講者の中で、17名が最後まで受講し、14人が修了することができました。両コースあわせて40名の募集に対して、受講者は20代から70代の33名。修了率は約80%となっています。初めての実施であることを考えると、一定の成果があったと評価しています。

——受講生の進路はどのようになっているのでしょうか?

高橋: 2021年12月9日に実施した受講生へのアンケート調査によると、回答した21名の中で、現職の継続を希望している方が4名、事務職への就職・転職希望が12名、事務職や営業職以外への就職・転職希望が3名となっています。そのうち5名が受講中に就職をはたしています。

「MOS資格取得支援コース」の受講者には、スキルを向上させ、資格を取得して社内でのキャリアアップにつなげたいという就業者が多かったのに対して、「ICTリテラシーコース」は、受講時に未就業の方が5名いて、就職意欲は強かったと思います。

就職・転職につなげることを重視したプログラム構成に

——リカレント教育のニーズについて、地域の関係機関に意見を求めたそうですね。

高橋: はい。厚生労働省の徳島労働局、ハローワーク徳島に事前にヒアリングしたところ、「事務・営業職に求められるパソコンスキルを有している求職者が少なく、雇用のミスマッチが発生している」との意見を得ることができ、ICTリテラシー教育にニーズがあると感じました。

大学によるプログラム案がまとまった段階で、徳島労働局、ハローワーク徳島、徳島県経営者協会、徳島県中小企業家同友会の4団体と大学による「四国大学ICTリカレント教育推進委員会」を発足させ、プログラムの検討・了承を経て開講となりました。

——就職や転職の支援に向けて、今回のプログラムではどのような工夫をしていますか?

高橋: 本プログラムは単なるパソコン教室ではなく、習得した技能を就職、転職につなぐことが目的なので、インターンシップと、キャリアコンサルティングに力を入れました。実地での職場体験だけでなく、WordやExcelを使って資料を作成し、オンラインでプレゼンテーションを行うオンラインインターンシップも実施しました。キャリアコンサルティングは、受講生1名あたり合計2時間(1時間×2回)実施しました。また、そのほかにも、仕事に就いていても受講しやすいように、火曜日、木曜日の19:00~21:00にプログラムに沿った学習を実施したり、希望者には対面授業の場を設けました。

e-ラーニングについては、「ICTリテラシーコース」の受講者からは、なかなか慣れなかったといった感想が寄せられた半面、「MOS資格取得支援コース」の受講者には好評でした。e-ラーニングは当初から予定していたものですが、コロナ禍でなければ、もう少し対面授業を増やしたほうがよかったかもしれないと考えています。

チラシからSNSまで多様な手段で講座を広報・周知

——講座の広報や周知についてはどのように行われたのでしょうか?

高橋: チラシ、求人情報誌、大学のホームページ、SNSとさまざまな手段で広報や周知に取り組みました。チラシは3000枚を作成し、県内のすべてのハローワーク、市町村、教育委員会に送付するとともに、徳島県経営者協会、徳島県中小企業家同友会の会員企業にも配布を依頼しました。また、地元の求人情報誌にも募集広告を2回掲出し、大学のホームページではトップページの目立つ場所に情報を掲載しました。SNSでの広報については、講師の方にもご協力をいただき、情報を発信してもらいました。

開講時のアンケートでは、回答した33名の中で、12名がチラシで講座を知ったと答えていました。ハローワークで、チラシを見せて参加を呼びかけてもらった効果が大きかったと思います。SNSでの広報も効果的であったと考えていますが、「MOS資格取得支援コース」の受講者の中には、SNSで発信していただいた講師の元で以前から学んでいる方もいて、その点が影響していたようです。

Voice

受講生

―受講したプログラムは、どのようなところに魅力を感じましたか?

Microsoft Officeの最新のバージョンでの資格取得ができ、実務に直結する内容でした。


受講生

―受講したプログラムは、どのようなところに魅力を感じましたか?

オンライン・対面授業のどちらにおいても、分からない部分への質問にすぐに丁寧に返答をいただけたのはよかったと思います。


受講生

―プログラムに関する感想、ご意見をお聞かせください。

PCなど必要な機器を貸与いただいた上でオンライン授業を受講できたため、自分のペースで充実した学びを得ることができました。


受講生

―受講を考える方に、メッセージをお願いします。

プログラムが少しでも気になったのなら応募するべきです。就業しながらの受講や試験は確かに大変でしたが、新しいスキルを身につけることで自信を持つことができ、新しい道へ進む決心もつきました。